第3章
北野紗良視点
父の書斎は二十年間、何も変わっていなかった――同じマホガニーの机、同じ革張りの蔵書、そして同じ、旧家の富とそれより古い秘密がむせ返るような匂い。
だが、今日は何かが違った。今日、すべてが変わるのだ。
「お前たちをここに呼んだのは」父が口火を切った。その声には、聞き慣れた絶対的な権威の響きがあった。「『極光』の未来に関する私の決断を告げるためだ」
私は椅子に座り直し、ポケットの中の榎本達也がくれた紙を、まるでお守りのように握りしめた。彼の温かい眼差しを思い出すと、自分でも知らなかった力が湧いてくる。
岩崎莉子は椅子の縁に腰掛け、手入れの行き届いた指でエルメスのバッグを握りしめている。北野彩香は、無垢な巻き毛と計算された愛らしさを振りまきながら、期待に胸を弾ませているようだった。
「私はこれを公正なものにしようと決めた。来月の国際ファッションデザイン大会で、娘二人に競ってもらう。勝者が『極光』を継ぐ」
その言葉は、部屋に落雷のように響き渡った。
「この大会は平等で、すべてを公開した。最高のデザイナーが勝つように」
北野彩香の砂糖菓子のように甘い微笑みは、決して揺るがなかった。「もちろんですわ、お父様。自分の能力には自信がありますもの」
嘘が彼女の舌からいとも簡単に出てくる。彼女は真実がどんな感触だったか、覚えているのだろうか。
「その挑戦、お受けします」
私は自分の声が驚くほど落ち着いていることに気づいた。
岩崎莉子の笑い声は、絹のように柔らかく、その二倍も危険だった。
「才能だけでは不十分なこともあるのよ。必要なのは……戦略、かしらね」
その言葉に込められた脅しは、あまりにも明白だった。
三週間後、屋根裏の部屋は、布と夢が散乱する戦場と化していた。
榎本達也は言った。美しいものは、ふさわしい光を待っている、と。これが、私の光だ。
私はコーヒーと、もっと深い何か――希望――を燃料に、夜を徹して作業した。
『再生』コレクションは、祈りが形になったかのように、私の手の中で姿を現していった。一針一針に、私の痛み、私の強さ、そして消えることを拒む私の意志が込められている。
「灰の中から、私たちは立ち上がる。影の中から、私たちは現れる」
私は設計図にそう囁いた。
ドレスは革命的だった。伝統的な職人技が現代的な革新と出会い、一つ一つの作品が変容の物語を語っていた。
見えない存在だった少女が、無視されることを拒む一人の女性になる物語を。
ほとんど眠らなかった。ほとんど食べなかった。
このコレクションは、私が夢見ることさえ恐れていたすべてであり、そして、私がついに創造する勇気を見出したすべてだった。
大会の前夜、階下の北野彩香の部屋から声が聞こえてきた。
衣装バッグを両腕に抱えた私は、階段の途中で凍りついた。
「……あの子を勝たせるわけにはいかないわ、お母様。私からすべてを奪うつもりよ」
岩崎莉子の返事は、毒に浸した蜂蜜のようだった。
「心配しないで。事故なんてものは……時々、ただ起こるものなのよ」
三番目の声がした――三浦友也だ。
「彼女を傷つけるんですか?」
「ほんの小さな事故よ、三浦さん。彼女は大丈夫。ただ……大会には出られなくなるだけ」
全身の血が凍りつく思いだった。
彼らは何かを企んでいる。でも、何を?
文化会館は、神経質なほどの熱気に包まれていた。ファッション界の有名人たちが、その年で最も権威ある大会のために集結していた。
私は衣装バッグをきつく握りしめた。中には私の『再生』コレクションが、安全に守られている。
自分のデザインを守ることに集中しすぎて、手遅れになるまでワイヤーに気づかなかった。
階段に張られた、ほとんど目に見えない何かに足が引っかかった。世界が傾き、そして私は落ちていった――固い大理石が、私を迎え撃つかのように迫ってくる。
衝撃で肺から空気がすべて押し出された。足首に、鋭く、即座に痛みが爆発する。
「いや!」私は喘ぎながら、身を起こそうとした。「大会に行かなくちゃ!」
救護員が現れた。
「お嬢さん、病院に行く必要があります。足首を骨折しているかもしれません」
「この瞬間のために、人生のすべてを懸けてきたの。今さら諦めたりしない」
そう言ったものの、夢が指の間から滑り落ちていくのがわかった。大会はあと十分で始まる。動くたびに、足首が悲鳴を上げていた。
すべてを逃してしまう。
私がよろよろとメインステージにたどり着いた頃には、ショーは終わりかけていた。
「今年の国際ファッションデザイン大会の優勝者は……北野彩香さんです!」
心が砕け散った。カーテンの隙間から、姉――私と瓜二つの双子の姉――が、私の作品に対する薔薇と喝采を受け取っているのを見た。
「あれは、私のデザイン。あれは、私の夢なのに」
私は囁いた。
北野彩香はスポットライトの下で輝き、私の作品の一つを身にまとっていた。
「ありがとうございます!このコレクションは、再生と新生という私のビジョンを表現したものです!」
一言一言が、ナイフで抉られるようだった。彼女は私の魂を、私の物語を、私のすべてを自分のものにしていた。
その時、ふと顔を上げると、彼がいた。
榎本達也。
彼は審査員席に座っていた。ダークスーツを優雅に着こなし、その目はステージに注がれている。北野彩香に。私の盗まれた夢に。
「榎本達也……あなたなの……」
世界が再び傾いた。だが今度は、怪我とは何の関係もなかった。雨の中、私を抱きしめてくれた人、私の中に救う価値のある何かを見出してくれた人――彼が、ここにいる。
観客が散っていく中、私は影に隠れ、榎本達也が北野彩香に近づくのを見ていた。
「北野さん、あなたの『再生』コレクションは並外れている」
北野彩香は彼の注目を浴びて、ほとんど輝いているようだった。
「ありがとうございます、榎本様。一針一針に、私の魂を込めましたの」
すべてが嘘だった。でも、榎本達也がそれを知るはずもない。どうして知ることができようか?
彼は、あの夜カフェで私に見せたのと同じ真剣さで、北野彩香の顔を観察していた。類似点に気づいただろうか?私たちの人生を通して、誰もが見間違えてきた、瓜二つの顔立ちに。
それとも、私はもう彼の世界ではただの影なのだろうか――見えなくなり、忘れ去られ、もっと輝かしい自分に取って代わられた存在に。
私は冷たい壁に背中を押し付け、私に希望を与えてくれた男が、私の夢を盗んだ女を褒め称えるのを見ていた。
その皮肉は完璧で、そして完璧なまでに残酷だった。
榎本達也――出世して力を持ち、私には縁のなかった世界の人。
でも、彼は信じてくれるだろうか?気にかけてくれるだろうか?
それとも、他の誰もと同じように、複雑な真実よりも、見栄えの良い嘘を選ぶのだろうか?
大会から三日後、私がまだ怪我をした足首と砕かれた夢を抱えていた時、父に書斎へ呼ばれた。
重いオークの扉を足を引きずりながら通り抜けると、馴染みのある葉巻と革の匂いが鼻をついた。父は机の向こうに座っていたが、その表情には何か変化があった――柔らかく、ほとんど……悔恨の色さえ浮かんでいる。
「紗良、お前に謝らなければならない。私は長い間、お前の真の才能に気づかずにいた」
心臓が跳ねた。
「お父様、それは……?」
彼は身を乗り出し、年季の入った両手を組んだ。
「お前こそが、『極光』の正当な後継者だ。あのデザイン……その糸の一本一本に、お前の魂が宿っている」
生涯聞きたいと夢見てきた言葉が、物理的な打撃のように私を襲った。涙が目を焼く。
「やっと私を見てくれて、ありがとう、お父さん」
「お前に才能があることはずっとわかっていた。だが、彩香の作品として展示されているのを見て……」彼は首を振った。「あの職人技、革新的な技術、感情の深さ――あれは彩香のスタイルではない。あれはお前のものだ」
知っている。彼は、本当に真実を知っている。
「お前を正式に『極光』の後継者として指名する」父は続けた。「だが、法的な手続きを済ませる間、数日間はこのことを秘密にしておいてほしい」
「ありがとう、お父さん」
トンネルの先に光が見えた――もうすぐ、あの屋根裏部屋を永久に離れることができる。










