第9章
北野紗良視点
榎本宅のキッチンでは、床から天井まで届く大きな窓から暖かな朝の光が差し込んでいるというのに、私は暗闇に溺れているような気分だった。
向かいに座る榎本達也の顔は、私の胃をかき乱すほどの興奮で輝いている。彼は朝起きてからずっと、小刻みに震えているかのようだった。
「あなたに、とびきり素敵なサプライズを用意したんだ」
彼の瞳は、ほとんど勝利を確信したかのような光で煌めいていた。「明日の夜、慈善パーティーで、すべてを変える発表をするつもりだよ」
心臓が肋骨に叩きつけられる。「すべてを変える?達也、怖いこと言わないで」
「怖がらないで」彼はテーブル越しに手を伸ばし、...
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