第1章

「お前はただの香水師だ。俺が抱きたい時に呼び出せる、ただの道具に過ぎない」

山崎亮介の声は氷のように冷たく、私の心臓を真っ直ぐに貫いた。

私は彼のために心を込めて作った香水を握りしめ、彼の専用室に立ち尽くしていた。三人の高級クラブ会員たちが、嘲笑を含んだ目で私を見ている。薄暗い個室の中、すべての顔がぼやけて見知らぬ他人のように見えたが、亮介の恐ろしいほど完璧な顔立ちだけは鮮明だった。

「この香水も、お前と同じだな――安くて、どうでもいい存在だ」

その言葉は雷のように私を打ち、瞬時にして意識を三日前のあの夜へと引き戻した。

あの時の私は、自分が特別な存在なのだと信じ込むほど愚かだった。「エリュシオン・クラブ」の最上階にあるスイートルーム。床から天井まで続く窓から月光が差し込み、シルクのシーツを照らしていた。亮介の指が私の頬をなぞる。その瞳には、それまで一度も見たことのない優しさが宿っていた。

「そのままで、完璧だ……」

彼が耳元で囁く。その声は少し掠れていて、抗えない磁力を帯びていた。

その瞬間、私はそこに愛があるのだと錯覚した。

三年間、私はクラブにいる平凡な香水師の一人に過ぎず、彼はすべての女性が憧れる男だった。だが、あの夜、彼の腕の中で、私は自分が世界で最も特別な女性になったかのように感じていたのだ。

間違いだった。致命的な間違いだったのだ。

翌朝、窓から差し込む眩しい日差しに目を覚ますと、ベッドの隣は空っぽだった。亮介はすでに服を着ていた。その動きは素早く、冷淡で、昨夜の親密さがまるで私の妄想であったかのように振る舞っていた。

「亮介?」

私は期待と不安が入り混じった声で、そっと呼びかけた。

彼は振り返りもせず、財布から札束を取り出してナイトテーブルに置いた。朝の光の中で、そのお金だけがやけに鮮明に目に焼き付いた。

「これはお前のサービス料だ」彼の声には一切の温もりがなかった。「悪くはなかったが、それだけの話だ」

サービス料――私は、彼にとっては一回限りのサービスに過ぎなかったのだ。

「私のこと、そんな風に……」

言葉が喉に詰まる。

「そんな風に、なんだ?」彼はようやく振り返ったが、その視線はまるで赤の他人を見るように冷たかった。「お前はただのクラブスタッフだろう?」

彼はスーツのジャケットを手に取ると、一度も振り返ることなくドアへと向かった。

バタンと扉が閉まる音が響く。私は乱れたベッドの上に一人残され、呆然としたまま、置かれたお金を見つめることしかできなかった。

認めたくなかった。

それからの三日間、私は香水工房に閉じこもり、必死になって『オブシディアン』と名付けたこの香りを作り上げた。私は他の女たちとは違うのだと、私が誰よりも彼を理解しているのだと証明しなければならなかった。

トップノートは、彼が好んで飲む朝の紅茶を思わせるフレッシュなベルガモット。ミドルノートは、彼の冷徹さと危険なオーラを表すブラックペッパーとシダー。そしてラストノートは、深いアンバーとムスク――彼への私の愛のように、深く、長く続く香り。

すべての香調に意味を込め、エッセンシャルオイルの一滴一滴に、三年間の秘めた想いを注ぎ込んだ。

鏡の前で、伝えるべき言葉を何度も練習した。「あの夜は私にとって特別だったの……。この香水は、あなただけのために作ったのよ……。私たち、ただの一夜限りの関係なんかじゃないって、わかってほしいの……」

この特注の香水があれば、私の価値を証明できる、彼に私を見直させることができると思っていた。私はあまりにも世間知らずだった。

そして今、私はここに立ち、最も残酷な言葉で自分の想いが踏みにじられるのを聞いている。

「亮介」

さっき、私は震える手でクリスタルの小瓶を彼の前に差し出し、こう言ったのだ。

「あなたのために、この香りを作ったの。あの夜……私たちは……」

「あの夜?」

彼は私の言葉を遮った。その声は皮肉に満ちていた。

「俺が憂さ晴らしにお前を使った時のことか?」

個室にいる他の男たちが顔を見合わせ、口元に薄笑いを浮かべた。頬がカッと熱くなるのを感じた。

「白石綾香」彼は愚かな子供に言い聞かせるような口調で続けた。「寝たくらいで、何かが変わるとでも思ってるのか?」

そして、あの打ちのめされるような言葉が続いた――道具、安い、使い捨て。

個室内が爆笑に包まれた。

「うわ、マジかよ。ワンナイトを愛だと勘違いしてたのか!」金髪の男が腹を抱えて笑った。「今年一番の傑作だな」

「こういう女はセックスと感情の区別がつかないんだよな」眼鏡の男が、さも当然のように首を振る。「誰かと寝れば、それで玉の輿に乗れるとでも思ってるんだろ」

「亮介、いつからそんな……安っぽいのが趣味になったんだ?」三人目の男が揶揄した。「まあ、たまには庶民の相手をするのも悪くないか」

一言一句が、鞭のように私の顔を打った。心を込めて作り上げた作品、三年の秘めた想い、美しい空想――すべてが彼らにとってはただの笑い話だったのだ。私の尊厳が一片ずつ引き裂かれ、足元で踏みにじられていくのを感じた。

汗ばんだ手のひらから、香水の瓶が滑り落ちた。

鋭い音がしてクリスタルが砕け散り、深い琥珀色の液体が床に飛び散った。高価な香りが瞬く間に部屋を満たす――私の三年間の心と魂が、尊厳と同じように砕け散ったのだ。

「もったいないことだ」亮介はこぼれた香水を何気なく一瞥した。「まあ、どうせ安物だがな」

視界が滲み始めた――それが涙のせいなのか、怒りのせいなのか、自分でもわからなかった。

何か自分を弁護する言葉を言いたかったが、喉に綿が詰まったようで、声が一つも出てこなかった。

「もう出て行け」

亮介は私を見ようともせず、グラスを手に取ってソファに座り直した。

「金が欲しいなら次はそう言え。子供じみた真似はするな」

私はきびすを返し、個室から逃げ出した。彼らの笑い声が悪魔の呪いのように背後から追いかけてきて、廊下にいつまでも反響していた。

香水工房に戻ると、私は完全に崩れ落ちた。

狂ったように棚のボトルをすべてなぎ払った。ガラスの割れる音が私の叫び声と混じり合う。数年間の苦労の結晶が床にぶちまけられ、鼻を突くような混沌とした香りが充満した。

私はガラスの破片の中に膝をつき、抑えきれない嗚咽を漏らした。

道具。安い。使い捨て。

その言葉が、杭のように心臓に突き刺さっていた。ガラスが手のひらを切り、血がこぼれた香水に滴り落ちる。だが、他のすべてに比べて、この痛みがなんだというのだろう?

三年の秘めた恋、一夜の情熱、丹精込めて作った香水――すべては人前での屈辱に終わり、自尊心を失っただけだった。

「そのままで、完璧だ」……あの優しい言葉も、愛おしげな眼差しも、すべて私の勝手な思い込みだったのだ。最初から、私は彼にとってただの道具、呼び出せばいつでも喜んで来る玩具に過ぎなかった。

涙は次第に乾き、怒りはゆっくりと麻痺したような疲労感へと変わっていった。砕けたガラスと散乱した香料が私を取り囲んでいる。まるで私の粉々になった心のように。

私はふらつきながら立ち上がった。手の傷から流れる血のことなど、気にも留めなかった。

逃げ出さなければ。忘れなければ。あの残酷な笑い声を、今夜のすべての出来事を一時的にでも忘れるには、酒しかなかった。

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