チャプター 12

フレデリックが身を乗り出してくると、彼の清潔で凛とした香りが瞬時に彼女を包み込んだ。あまりにも近すぎる――彼の深い瞳に、パニックに陥った自分の顔が映るのが見えるほどだった。心臓が早鐘のように肋骨を打ち鳴らしている。

彼女は身をこわばらせ、キスの覚悟を決めた。

だが、フレデリックはただ彼女の肩越しに手を伸ばし、指先でシートベルトの解除ボタンを押しただけだった。カチッという小さな音とともに、ベルトが巻き取られていく。

彼が自身のシートに座り直すと、あの圧倒的な威圧感も遠ざかっていった。胸が高鳴るような先ほどの密着など、まるで初めからなかったかのようだ。

車内にはまだ甘やかな親密さの余韻が漂...

ログインして続きを読む