チャプター 56

 彼女が一歩踏み出した、そのときだった。背後からフレデリックの落ち着いた声が飛んでくる。

「リアム」

 リアムはすぐさま扉を押し開けて入ってきた。「スチュアート様」

 フレデリックの視線は、頑なに背を向けたままのベアトリスに据え置かれている。薄い唇がわずかに開き、短く言い渡した。

「ベアトリスを法務部へ連れていけ。ブロッサム国際展示センターのAホールを無償で使用する契約書に署名させる」

 その日のうちに、スタジオの公式サイトは告知を出し、ジュエリー展示会は二日後に開催されることになった。

 当日、展示ホールは招待客で埋め尽くされ、誰もがこれでもかというほど着飾っていた。

 来場者...

ログインして続きを読む