チャプター 58

ベアトリスはフレデリックにきつく抱きすくめられ、息がうまくできずにもがいていた。押しのけようとしても、彼は腕にいっそう力を込めるばかりだ。

酒の匂いに、彼の身体から漂う杉の新しい香りが混じり合い、鼻腔を侵した。それが苛立ちと戸惑いを同時に呼び起こす。

「はいはい、いちゃつきはそのへんで十分だろ」デニスはスマートフォンをしまい、近づいてフレデリックの背中をぽんと叩いた。「フレッド、起きろ。運転手に送らせて二人で帰れよ。まさか俺んとこで潰れる気か?」

フレデリックは何も聞こえないふりをして、ベアトリスにしがみついたまま一歩も動かない。

怒りと無力感に胸を詰まらせながら、ベアトリスはデニスを...

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