チャプター 76

「申し訳ありませんが、グレイ様。当館ではそのような対応はいたしかねます」受付係はわずかに笑顔を消し、手慣れた愛想のよさでヒラリーの言葉を遮った。

気まずい沈黙が辺りを包み、ヒラリーの顔は真っ赤に染まった。

ベアトリスは彼女の袖を引っ張り、「行きましょう」とささやいた。

二人が立ち去ろうとしたその時、近くの少し開いたVIPルームのドアから、先ほどとは打って変わった声が漏れ聞こえてきた。同じ受付係の声だったが、今度は媚びへつらうような、圧倒的な熱意にあふれていた。

「テイラー様! まさかご本人がいらっしゃるとは驚きました! 美術展の手配でしたら、お電話一本で十分でしたのに。いつでもご用意さ...

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