第10章

弥生先輩は、帝都の社交界でも名門クラブの若い連中の間でも、いわば“顔”みたいな存在だ。だから彼が口を開いた途端、ざわついていた空気がすっと引いた。

さすがに、あの人の面子は立てる。

誰もが矛を収め、騒ぎはそこで止まった。

人垣の向こうで、桐生椿が眉を上げる。

帝都の社交界――権勢の象徴みたいな名門クラブにも、弥生先輩みたいに筋の通った人間がいる。

それは、少し意外だった。

――

弥生先輩が出てきたことで一件は収束し、その後は誰も桐生椿に絡もうとしなかった。

今日の研修が終わると、皆いつもどおり家路につく。

だが椿だけは、まっすぐ帰らなかった。帝都近郊の地下闇市へと足を向ける...

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