第114章

要するに、スピード勝負ってだけの話だ。

 桐生椿は岩壁にブーツのつま先を叩きつけ、反動で一気に駆け上がった。上に足場になる突起があるかどうかなんて関係ない。岩肌には必ず、わずかな凹凸や筋がある。彼女はそこを拾っていく。

 その「ほんの少しの外へ張り出したライン」をなぞるように、椿はあっという間に山頂へ躍り出た。続けて、腕力だけでロープを巻き取る。

 救助対象は、そのまま下から引きずり上げられた。

 助かった相手が最初に口にしたのは、こんな台詞だった。

「女神! マジでやばいっす! 今度クライミング教えてくれません?」

 椿は返事もせず、相手の襟元をつかんで立たせ、そのままヘリへ放...

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