第122章

桐生椿の「可哀想」は、そこにいた全員の胸を容赦なく揺さぶった。

五人の犯人は当初こそ警戒していた。だが、椿が感情を丁寧に乗せていくにつれ、視線も意識も、いつの間にか彼女だけに吸い寄せられていく。

そのタイミングで、椿はさりげなく指先を動かす。

――竹村友梨と杉原翼へ。合図。

五人は椿を囲み、口々に「大丈夫だ」と慰め始めた。

人質たちも、逃げることを忘れてしまっている。

竹村友梨たちが現れて「今だ、出ろ」と目で促さなければ、あのまま立ち尽くしていたかもしれない。

人質を陰で退避させ終えると、二人は背後から回り込み、五人を不意打ちで確保する――はずだった。

ところが。

桐生椿が...

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