第20章

「Y国ロンドン……サザビーズ……!」

 この二つの単語が噛み合った時点で、たとえ彼女が百通りの言い訳を並べて『自分はフォックスじゃない』と訴えたところで――九条蓮みたいな勘の鋭い男が信じるはずもない。

 ――くそ。

 まさか、ここでこの手を打ってくるなんて。

「椿は、私たち……」と桐生武治が笑みを浮かべて口を開く。

 その瞬間、桐生椿は体の横に下ろしていた手を、ほとんど反射で刀の柄へ滑らせていた。指先が、形を探る。

 危険。――一瞬。

 だが。

 桐生雪菜が夫の腕にそっと絡みつき、先に言葉を奪った。

「椿はD国で見つけて連れ戻したの。かわいそうに、長いこと故郷を離れて……。...

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