第206章

こんなご時世に、山の中に住みたがる人がまだいるなんて。しかも、わざわざこんな高い場所に。若い連中の体力を鍛えたいのか、それとも根性を試したいのか。

九条蓮が先に車を降り、回り込んで桐生椿のドアを開けた。

ぶっきらぼうで、いわゆる直球タイプの男ではある。けれど女性への敬意だけは、骨の髄まで染みついているらしく、椿ですら文句のつけようがない。

椿は差し出された手に軽く指を預け、車から降りた。

「ねえ。最初から家族に会わせるつもりなら、せめて先に言ってよ。着替える時間とか、メイクとかさ。今の私の格好で……本気で連れてく気?」

椿の服装はラフだった。動きやすいカジュアルに高い位置のポニーテ...

ログインして続きを読む