第21章

 同じ瞬間、九条蓮の表情もすっと引き締まった。

 だが九条蓮は、桐生椿に考える暇も退く暇も与えない。拳を固め、再び踏み込んでくる。

 まさに、間一髪――!

「誰だ! 喰らえ!」

 椿は脳内で切り替え、短く声を張った。掌を突き出し、脚を上げる。

 構えだけは、それなりに迫力がある。

 ――ところが。

 九条蓮へ打ち込もうとした、その瞬間。今度は驚くほど自然に、まるで演技の欠片もない「左足で右足を踏む」という初歩的ミスをやらかし、見事に前のめりで男の胸へ飛び込んだ。

 九条蓮は、桐生椿こそ自分が追う女だと想定し、全身を鋼のように張り詰めさせていた。拳を振り抜き、十全の力で確保する...

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