第29章

  彼の情けない顔を見て、桐生椿は珍しく譲歩した。

「……いいわ。あんたがもう少しで男でいられなくなるところだった、その分だけ付き合ってあげる」

 ――本音を言えば、この小頭が口にした「黒幕」にも、少し興味が湧いていた。

 椿が承諾した途端、小頭は露骨に息を吹き返した。さっきまでの青い顔が嘘みたいに、腰の痛みも股間の疼きも消えた気がしたのだろう。

「最初からそう言ってくれりゃいいんだよ! さあさあ小姑奶奶、車乗って! 行きましょ!」

 呼び方まで変わっている。

 椿は気にも留めず、小頭の後について車へ乗り込んだ。

 目的地に着くと――

「ようこそ、俺たち紅狼会へ!」

 小頭...

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