第31章

皆がこの場で盛大に褒めちぎって、好意を示そうとした――そのときにはもう、桐生椿の姿はなかった。

音もなく、言葉ひとつ残さずに。きっと、現れては消えるのが当たり前なのだろう。

「椿様! 連絡先、まだ聞いてねえ!」

ウルフが血相を変えて外へ飛び出したが、そこにはもう誰もいない。

すぐさま手下を走らせた。だが、影すら掴めない。人の気配が、最初から存在しなかったみたいに。

「ウルフ、この桐生家の次女って、いったい何者なんだよ。神出鬼没ってレベルじゃねえだろ」

小頭が頭をかきながら訊く。

「俺が知るかよ。ただな――嫌な予感じゃねえ。いい予感だ。あのお嬢ちゃん、いずれ俺らを“帝都の地下で一...

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