第42章

桐生美月はもう我慢の限界だった。キャリーケースを押したまま、桐生椿を置き去りにしてさっさと先に行く。

部屋を決めて荷物を置き終えた頃になって、ようやく桐生椿がのそのそと別荘に入ってきた。

「ちょっと、あんたその格好。汚いし臭いし、さっさとお風呂入りなさいよ。ここで恥さらさないで」

桐生美月は口と鼻を手で覆い、まるで椿が悪臭の発生源みたいな顔をする。

その言葉を聞いた桐生椿は、ふっと面白がった。

わざとゆっくり歩いて美月の目の前まで行き、油断した隙に――ぎゅっと抱きつく。

「きゃっ!」

桐生美月が悲鳴を上げた。

汚れた体で抱きしめられている、と思っただけで気が狂いそうだ。どれだ...

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