第44章

「椿、何か食べたいものある? このタラバガニ、すごく身が詰まってるけど……ひとつ取る?」

桐生雪菜が、水槽の中で脚をわさわさ動かすタラバガニを指さして尋ねた。

桐生椿はこういうものに興味が薄い。けれど母がやけに嬉しそうなので、合わせて頷く。

「うん。好き」

「よかった」

雪菜が「ここでいちばん高くていちばん美味しいものを、娘に」とでも言いたげにトングへ手を伸ばした、そのときだった。

数人が連れ立ってレストランに入ってくる。

先頭の女は、20カラットのダイヤが鎮座した指をわざとらしく持ち上げ、髪をかき上げた。

「ここが『天にも地にもない最高級レストラン』って褒められてたとこ? ...

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