第45章

ほかの連中はみなぽかんとしていて、桐生椿が誰のことを言っているのか、さっぱり分かっていなかった。

だが、黒瀬奈央だけは分かっている。顔には挑発的な笑みを貼りつけたまま、視線だけが不自然に揺れた。

――くそっ。

こんな奥の話、どうして知られている。

雪菜の娘はいったい何者だ?

桐生椿は一度、伏し目がちに考え込む素振りを見せてから、思い出したように付け足した。

「……あ、そうだ。たしか、すごく有名な女優の愛人がいたよね。ニアって」

ニアの名が出た瞬間、周囲の野次馬が一斉にざわめいた。

「えっ、あの有名歌手のニア!? まさか愛人って……」

「うそでしょ……」

「ふざけたこと言わ...

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