第49章

桐生椿が「んっ……」と短く息を漏らした。顔を上げた瞳にはうっすらと涙が滲み、理不尽に耐えているみたいな顔が、妙に色っぽい。

禁欲を貫いてきた九条蓮ですら、その光景に喉がごくりと鳴った。喉仏がすっと上下する――それだけで、やけに艶がある。

桐生椿も、思わず見とれた。

近くで見ると……この男、ほんとに目の保養だな。

胸板も、悪くない。

無意識に手が伸び、軽く掴むように触れてしまう。九条蓮の視線が反射的にその手先へ落ち――そのまま、少女の胸元の隙間まで、はっきり目に入ってしまった。

……っ。

思った以上に――ある。

そんな考えがよぎった瞬間、九条蓮はぱっと目を閉じた。

見るな。

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