第50章

あの瞬間、言葉を失ったのは桐生美月だけではない。桐生武治も、桐生雪菜も同じだった。

桐生家と九条家は昔から多少の付き合いがあり、表に出ない話も耳に入ってくる。

噂の九条家の戦神は、若くして名を上げた英雄でありながら――女にまったく興味を示さない男。縁談の話が進まなさすぎて、九条家が長年頭を抱えている、というのがもっぱらの評判だった。

武治はさらに聞いている。身の程知らずの名家の娘が小細工で九条様を落とそうとしたところ、当の本人に問答無用で追い払われ、氷雪の南極でペンギンの世話をさせられている、と。

それだけじゃない。

戦神が近づいてきた女をどう痛めつけるか――そんな噂は、枚挙にいと...

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