第52章

「離して、離して! 腕がちぎれる!」

 桐生椿は手を放すと同時に、高橋菜々の肩をぐいと押した。体勢を崩した菜々はみっともなく床へ転がる。

 周囲から、こらえきれない笑いが漏れた。

 恥をかかされた高橋菜々は、すぐさま桐生椿をにらみつける。

「誰かと思えば……金持ちの中年の豚に囲われてる、桐生家のちっぽけなクズじゃない。あたしなら恥ずかしくて家から出られないけど?」

 桐生椿は口角を上げただけで、何も言わない。

 次の瞬間、彼女は菜々の腹に靴底を置き、ぐっと踏み込んだ。

 ――二度目の痛み。

 そして、二度目の屈辱。

 高橋菜々は必死に足をどかそうと両手で掴むが、桐生椿の足は...

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