第54章

桐生椿は黒のレザージャケットにレザーパンツへ着替え、短剣を太腿のホルスターに差し込んだ。バスルームの扉を出るついでに、細い針金を壁のコンセント穴へすっと差し込む。

バチバチッ、と火花が散った。

次の瞬間、部屋の電源が落ちる。

闇が、すべてを飲み込んだ。

停電したのは桐生椿の部屋だけではない。小さな回路トラブルが引き金になり、ホテル全体が数秒だけ暗転した。

やがて照明が戻ったとき、桐生椿の姿はもうない。ベッドには、布団をかぶせた枕が置かれているだけ。まるで彼女が眠っているかのような、雑な――だが暗闇の数秒なら十分な偽装。

桐生椿は夜の亡霊みたいに、闇に紛れて外壁を伝い、そのままホテ...

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