第152章 鮮魚を贈り物として

「篠原瑤、あるいは篠原さんと呼んでください」

藤崎夫人だなんて、もうやめておきたい。

そう遠くないうちに、彼女は藤崎隼人と離婚できるのだから。

「岡村和幸です」と、男は自己紹介した。

篠原瑤は数秒、呆気にとられた。

岡村和幸?

その名前には聞き覚えがあった。不動産王の息子で、風迅グループの次期後継者。

ただ、岡村和幸はミステリアスで控えめな人物として知られ、公の場に姿を現すことは滅多にない。彼に関する情報も、業界の誰かから偶然耳にした程度だ。

目の前のこの岡村和幸が、噂に聞いたあの岡村和幸なのかは分からない。

「若、魚がかかりました」と、角刈りの男が穏やかな声で促した。

岡...

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