第264章 私がいるから、君は何も怖がる必要はない

 車が藤崎邸に差し掛かる頃、彼女は目を開けて彼を見上げた。

 彼の横顔は美しく、鼻筋が通っている。

「眠いなら、そのまま寝てていい」藤崎隼人は彼女の視線に気づき、目を伏せて微笑んだ。

「篠原詩織は、今でもあなたのことが好きだと思う?」

「好きだろうが嫌いだろうが、俺には関係ない」

「彼女、今は黒沢西の婚約者で、記憶喪失だと自称しているわ」

「フリだろうな」

 彼女は「うん」と頷き、藤崎隼人の言葉に同意した。彼女もまた、篠原詩織の記憶喪失は演技だと感じていた。

「もし篠原詩織があなたを愛するあまり、憎しみに変わっていたら……」それ以上は言葉が続かなかった。今回戻ってきた篠原詩織は...

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