第290章 私の胸に来て

以前の黒沢西なら、迷わず駆け寄って彼女の手を取り、優しく揉んでやっただろう。しかし今この瞬間、腫れ上がった篠原詩織の顔を見つめ、甘ったるい声を聞いていると、ただただ吐き気がした。

彼は心臓さえも抉り出して彼女に捧げたいと願っていた。だが、彼女はどうだ?

彼を手玉に取り、記憶喪失を装い、彼を利用し、さらには彼から一億もの大金を巻き上げた。

その一億を彼女が一体何に使ったのか、彼には知る由もない。もし本当に大倉俊に渡したのだとしたら、殺し屋を雇う資金にでもなったのかもしれない。

「西お兄さん、ぼーっとしてどうしたの?」

篠原詩織は唇を尖らせ、涙目で彼を見つめた。「早くこっちに来て」

彼...

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