第291章 あなたは私を愛していない

 篠原瑤は黒沢西が篠原詩織を連れて帰って何をするつもりなのか、皆目見当がつかず、戸惑いでいっぱいだった。

 不思議に思って振り返ると、ふと藤崎隼人の姿が一瞬見えた気がした。

 眉をひそめながら病室の前に歩み寄り、ドアを開けると、藤崎隼人がベッドでおとなしく横になっていたので、自分が見間違えたのかもしれないと思った。

「さっき、起きてた?」

 藤崎隼人は真顔で首を横に振り、隣のスペースをぽんぽんと叩いた。「こっちに来い」

 声は軽やかだったが、その口調には有無を言わせぬ横柄さが滲んでいた。

 記憶を失くしても、彼が生まれ持った気質は少しも変わっていないようだ。

 目覚めたばかりの頃...

ログインして続きを読む