第299章 誰も彼の心の中で彼女の位置に及ばない

 彼は布団をめくってベッドから降り、部屋を出た。階下で水を一杯飲もうと思ったのだが、数歩も歩かないうちに、権藤執事がとある客室から顔を覗かせた。

「若様、また頭痛でございますか?」

 権藤執事はもともと眠りが浅い。これほど悪天候で、雷鳴が轟き大雨が降っているのだから、とっくに目を覚ましていた。

 廊下に人の気配を感じて様子を見に出てみると、そこにいたのは藤崎隼人だった。しかも顔色がひどく蒼白だったため、また頭痛が始まったのだと思ったのだ。

「鎮痛剤をお持ちしましょうか?」

 数歩で駆け寄り、気遣わしげに尋ねる。

 藤崎隼人はしばらく彼を見つめてから、階段の方へ歩き出した。歩きながら...

ログインして続きを読む