第323章 花嫁強奪の決意

マンションの至る所に、桐生甜の面影が漂っている。

彼はソファに身を沈め、ローテーブルに置かれたペアのマグカップを見つめた。

カップは桐生甜が特注したもので、青とピンクが一つずつ。表面には二人の写真がプリントされている。

彼は懐からスマートフォンを取り出し、桐生甜の番号をコールする。

——繋がらない。

繋がらないと分かっていても、自分を騙してでも架けずにはいられなかった。奇跡が起きることを願って。

彼女が今も桐生家に閉じ込められていると想像するだけで、拳に力が入り、視界が滲んでいく。

海外にいた数年間、彼が恐ろしい深淵に堕ちずに済んだのは、ひとえに桐生甜が傍にいて、何度も正してくれ...

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