第338章 記憶回復

足を踏み外した瞬間、篠原瑤の頭の中は真っ白になった。

階段の高さは優に二メートルはある。このまま落ちれば、流血沙汰になるのは避けられない。だが不幸中の幸いと言うべきか、彼女の視界に藤崎隼人の姿が映った。

彼は階段の途中にいた。彼女との距離はそう遠くない。彼はそこで立ち止まり、片手でこめかみを強く押さえ、もう片方の手で手すりをきつく握りしめていた。顔色は最悪だ。

見て取れるほどに、また頭痛の発作が起きているのだ。彼がここにいるということは、明らかに上の階にいる彼女を探しに来たのだろう。

物音に気づいたのか、彼は弾かれたように顔を上げた。漆黒の双眸が、恐怖に揺れる瑤の瞳とかち合う。ほぼ無意...

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