第346章 彼女にとって大切

彼女は何も言わず、藤崎隼人の胸に顔を埋めたまま、張り詰めた心をゆっくりと鎮めていった。

「いつ、アメリカへ?」

彼女は顔を上げ、彼を見つめる。

彼は少し考え込み、口を開いた。

「数日のうちに出発する。早く行けば、叔父の最期に間に合うだろうからな」

藤崎隼人を引き留めたい、行かないでほしい。そう願ったが、言葉は喉元で止まり、声にはならなかった。

彼にはもう身寄りがないと思っていたが、実の叔父がいたとは。肉親の死に目に会おうという彼を、どうして引き留めることなどできようか。

「渋谷奕さんは……どうなりましたか?」

藤崎隼人は呆れたように首を振る。

「久保湘子が出て行って、相当堪えてい...

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