第364章 愛らしい子

残った二人のボディーガードがステージに上がり、遠山聖也を引き剥がそうとしたが、ビクともしない。彼らは潔く諦め、個室のドア前まで下がって待機することにした。

ガラス越しに、ステージ上で狂ったように踊り狂う遠山聖也を見つめながら、渋谷奕の脳裏にふとある光景が過ぎった。遠山聖也が遠山知佳を担いでトイレの方へ向かった時のことだ。

彼は車椅子を操作して個室を出ると、トイレに近づいた。

人の出入りはない。

少し迷ったが、声をかけてみた。

「遠山さん、中にいるのか?」

返事はない。

代わりに、男子トイレから声が聞こえた。

「誰かいますか? 出してください」

女の声だ。

彼は男子トイレに入...

ログインして続きを読む