第369章 人質交換

藤崎隼人は手際よく落合九美の資料を引き出しに戻すと、篠原瑤を肩に担ぎ上げて書斎を出た。

篠原瑤はうつむき、手の中にある万年筆を見つめた。記憶が数年前、高校の卒業式の日に引き戻される。

あの日、藤崎隼人は卒業生代表として壇上でスピーチをしていた。彼女は舞台の下で花束とこの万年筆を抱え、彼に渡そうと待っていたのだ。

学生時代の彼は、彼女を見る時いつも目に笑みを浮かべていた。

「これ、私から……」

言いかけた言葉は、急き立てるようなサイレンの音にかき消された。

パトカーの音が外から近づいてくる。

藤崎隼人は足早に階段を下り、そのまま別荘の外へと歩を進めた。

路肩にはすでに数台のパトカ...

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