第386章 体をしっかり治せ、二度と病気になるな

「久保湘子、行かないでくれ」

「戻ってこい! 戻ってきてくれ!」

「行くな……」

 悲痛な叫びが、断続的に響く。

 遠山知佳はハッと目を覚まし、ベッドから這い起きると、上着を羽織って部屋を出た。

 彼女の部屋は渋谷奕の隣にあり、彼の絶叫は鮮明に聞こえていた。

 廊下には壁掛けランプがいくつか灯っているだけで、薄暗い。

 数分経っても使用人が現れる気配はない。彼女は数秒迷った末、意を決して渋谷奕の部屋へと足を向けた。

 そっとドアを押し開け、寝室の明かりをつける。ベッドの上の渋谷奕は脂汗にまみれていた。

 眠っている。どうやら夢を見ているようだ。

 彼女は洗面所へ向かい、タオ...

ログインして続きを読む