第392章 泥棒のように彼を警戒

彼女は小さく溜息を吐いた。やはり放っては置けず、きびすを返してベッドサイドへ戻ると、ティッシュを数枚引き抜き、彼の鼻血を拭ってやる。

渋谷奕はあごを少し上げたまま、されるがままになっている。頬の朱色が引くまで、随分と時間がかかった。

「俺、本当は何も見てないからな。マジで」

遠山知佳はジロリと彼を睨んだ。

「見てないなら、どうして鼻血が出るんですか」

「俺は……とにかく、見てない」

渋谷奕は頑として認めない。これからの関係が気まずくなるのを恐れ、しらばっくれることに決めたようだ。

遠山知佳は言い争うのも面倒になり、ティッシュを二つ丸めて彼の鼻の穴に乱暴に詰め込むと、さっさと背を向け...

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