第443章 命を救う一口の酸素

「できないわ」

「私がやる。なんとかしてこっちに寄って。手の縄を解くから」

 彼女は長谷川安堂の配下である二人の男を、警戒心も露わに見据えながら声を潜めた。

 遠山知佳は彼女と自分の状況を見比べ、苦笑を浮かべる。

「無理よ、近づけない」

 二人は並んで縛られていたが、その間には微妙な距離があった。両手は後ろ手に拘束されている。互いの縄を解くには、背中合わせになるしかない。

「お前ら、何をコソコソ話している」

 話し声に気づいた黒服の男が、ツカツカと二人の前へ歩み寄る。男は久保湘子の体を乱暴に掴むと、横へと引きずった。ただでさえ開いていた二人の距離が、さらに遠ざかる。

 これで、縄...

ログインして続きを読む