第4章

ルシアン視点

 俺は双子をいちばん近くにいた人間――たぶんセラフィーヌに、ろくに顔も見ずに押しつけて、走った。

 車の中には、まだ彼女の匂いが残っていた。それが最初に気づいたことだった。柔らかな匂い。いつだってただの助手席の匂いだったはずのそれに、俺は両手でハンドルを握ったまま、ようやく理解した。何年も前から気づかなくなっていたのは、そこにあるのが当たり前だったからだ。

 封筒は、今朝置いたままの位置でダッシュボードの上にあった。

 俺は走らせた。

 廃倉庫に着いた時には、現場はすでに規制線で囲われていた。血はまだ乾いていない。

 コービンは外周に立ち、何も言わなかった。言うべき...

ログインして続きを読む