第5章

警視庁のセーフハウスは、古くなったコーヒーと絶望の匂いが立ち込めていた。

「時間稼ぎか、水原」森田英二は私たちの間にある金属製のテーブルに、小さな小瓶を叩きつけた。「今夜、これを奴の酒に盛れ。合図と共に突入し、奴の身柄を確保する」

透明な液体を見つめると、胃がキリキリと痛んだ。「もう少し、調査の時間が必要です――」

「もう二週間だぞ、水原」彼の声には、鋭い疑念が混じっていた。「まさか、ターゲットに情でも湧いたか?」

心臓が激しく鼓動したが、表情は平静を保った。「まさか。ただ、もっと直接的な証拠が欲しいだけです」

「証拠だと?」森田は冷たく笑った。「絵里、お父さんの血こそが証拠だ...

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