第4章

瑠美視点

朝八時、私は名波谷警察署に足を踏み入れた。ここまで来る車の中で、私はずっと何を言うべきか練習していた。冷静で理性的であるように聞こえるよう、万全を期して。少しでもヒステリックに見えれば、まともに取り合ってもらえないとわかっていたからだ。

近づくと、受付の警官が顔を上げた。「どうされましたか?」

「未解決事件に関する情報提供をしたいのですが」私は言った。声は落ち着いていた。「二〇二一年六月十五日、桜道二十九号線で起きたひき逃げ事件。三橋和也と三橋奈央が亡くなった、あの事件です」

彼の表情が変わった。「あなたは……」

「二人の娘、三橋瑠美です」私はスマートフォンを取り出...

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