第7章

午前九時。私は書類の整理をしていた。

階下の警備員から内線が入る。

「高木覚が入り口で騒いでいますが、警察を呼びますか?」

私は窓辺に歩み寄り、眼下を見下ろす——

高木覚は相変わらず惨めな姿だった。車椅子に座り、ビルに向かって何かを叫んでいる。野次馬が指をさし、記者が写真を撮っていた。

「騒がせておきなさい」

私はデスクへと背を向けた。

「放っておけばいいわ」

十分後、宮下がドアを開けて入ってきた。

「彼氏、随分前から下にいるよ」

「元夫よ」

私は訂正した。

「それに、私にはもう関係ない」

天井まで続くガラス窓に、彼の姿が映り込んでいる。

「自業自...

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