第104章 何と引き換えにするか

彼女が駆け出そうとした、その瞬間――アザールの手下が二人、すっと前に出た。

黒々とした銃口が、迷いなく彼女の胸元を捉える。

「どけ!」

若林星奈は歯を食いしばり、扉から目を逸らさない。

アザールは悠然とロビーの中央へ戻り、革張りのソファにどさりと腰を落とした。

テーブルの酒を取り上げ、半分ほどグラスに注ぐ。氷をからん、と揺らした。

「焦るなよ、若林さん」

吐き気がするような笑み。金歯がぎらりと光る。

「人間は見ただろ。ピンピンしてる。手足も揃ってる。――さて、こっちの話をしようか」

「何が欲しいの」

「アザール、条件はさっき言ったとおりだ」

水谷瑞貴が低い声で切り出す。...

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