第105章 これは夢ではない

「母さん……これは夢じゃない。私だよ、星奈。迎えに来た。帰ろう」

若林寧々は娘をぼんやり見つめたまま、ひび割れた唇をかすかに動かす。けれど声にならない。

地下の檻に閉じ込められていた時間が長すぎた。外の世界がどんな色をしていたかさえ、もう思い出せない。

「母さん、行こう。諦めちゃだめ。……孫がいるの。優斗っていう子で、すごくいい子。顔も母さんに似てる。今、安全な場所で私たちを待ってる。会いたくない?」

「孫」という言葉を聞いた瞬間、若林寧々の死んだような瞳に、ほんのわずかな灯が宿った。

生きる、という衝動。

「……まご……」とかすれた声が漏れ、若林寧々は反射みたいに若林星奈の手首...

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