第109章 残す

後部座席で、甲高い電子アラームが突如けたたましく鳴り響いた。

心電モニターが赤く点滅し、画面の波形が激しく乱高下する。

若林寧々の呼吸はみるみる浅く短くなり、酸素マスクの内側が白く曇った。

「車を止めろ!」乗り合わせた医師が叫ぶ。

「血圧の落ち方が速すぎる。心臓の負荷が限界だ」

「先生、母は飛行機まで持ちますか?」若林星奈が声を絞り出す。

医師は首を横に振った。

「無理です。今の状態で高空の気圧変化を受けたら、命取りになる。まず安静にして、数値が落ち着くまで待つしかない」

若林星奈の頭の中が、ぶんぶんと鳴った。

母は道中で死なせられない。けれど優斗は、まだ山川心菜の手の中に...

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