第110章 秘密

水谷瑞貴は固く閉ざされた扉を見つめ、それから扉の外に立つ若林星奈へ視線を移した。

「訊いてこい。いずれ知ることだ」

そう言い残し、ズボンのポケットに手を突っ込むと、踵を返して廊下の突き当たり――バルコニーへ向かった。

星奈は、その背中が角に消えるのを見届けてから、扉を二度、控えめに叩く。

「母さん。水谷瑞貴は行った。いまは私だけ。開けて」

沈黙が長く続いた。やがて、カチャ、と鍵の音がして、扉が細く開く。

若林寧々は血の気の引いた顔で星奈を引きずり込み、素早く内側から鍵をかけた。

ベッドの縁に座らせられた星奈は、母の手がずっと震えているのに気づく。掌は汗でびっしょりだった。

「...

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