第114章 私の人

若林星奈は彼の胸をぐい、と押した。

「水谷瑞貴、放して。外、みんな人がいるの」

「だから何だ」

水谷瑞貴は口元だけで笑う。

「行くぞ。顔を出しておきたい連中がいる」

反対の言葉を待つ気もないらしい。手首を掴まれ、そのまま休憩室の脇扉から連れ出された。向かった先は会場2階、VIPボックス席エリア。

2階は静寂に包まれていた。階下の喧騒は厚い壁に遮られ、遠い波音みたいにしか聞こえない。

上質なスーツに身を包んだ“大物”が数人、すでに席に着いて待っていた。水谷瑞貴の姿を認めるなり、揃って立ち上がり、恭しく頭を下げる。

水谷瑞貴は若林星奈の手を離さないまま、ソファへ座らせた。自分も隣...

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