第121章 あと1分

ホテル内。

支配人はテーブルの上に置かれた黒い名刺を凝視していた。こめかみに滲んだ汗が、つう……と頬へ落ちる。

「み、……水谷社長……」

声が震え、喉の奥がひきつる。

その名刺を、支配人は知っていた。雲城で、漆黒の地に名前だけ――そんな名刺を使うのは、ただ一人。下手に手を出せば、ただでは済まない、水谷社長だけだ。

水谷瑞貴は腕を上げ、腕時計に視線を落とす。

「あと一分」

支配人は膝が抜けそうになりながら、慌ててトランシーバーを掴んだ。

「警備部! 最上階のスイートに上がれ! 中の人間を“ご退室”いただけ! 急げ!」

叫び終えるなり、支配人はくるりと向き直り、若林星奈の前で深...

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