第18章 優しい人

木下静香のひと言で、ただでさえ張り詰めていたオフィスの空気が、一気に沸騰した。

西野直人の顔色は、もはや「不機嫌」なんて生易しいものじゃない。

彼は若林星奈を射抜くように睨みつけた。視線だけで、彼女の身体に穴を二つ焼きつけてやりたいと言わんばかりに。

高級車で送迎。気が利きすぎる男。

――その相手が、神田健斗。

昨夜、彼は確かに見たのだ。若林星奈が神田健斗の車に乗り込む瞬間を。

そして今日。神田健斗が用意した服を着て、神田健斗の車で、平然と自分の会社に現れた。自分の目の前に。

……俺を、何だと思ってる。

馬鹿にしてるのか。

木下静香の視線は、今度は若林星奈の腕の中にいる若林...

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