第20章 策に溺れる

若林星奈はパソコンの画面から視線を外し、目の前に積み上げられた資料の束へ落とした。

そして、南川碧の――皺だらけの笑顔を、何気ないふりで一瞥する。その瞬間、胸の奥で答えがきれいに繋がった。

星雲不動産。

西野グループが今年、肝入りで押している案件。しかも山川心菜が一手に握っていた仕事。

――なるほど。人を使って汚れ役をやらせる気だ。

成功すれば「南川碧の采配が見事」。

失敗すれば「若林星奈の力量不足」。自分には関係ない顔ができる。

山川心菜が戻ってきて責任を追及しても、「若林が自分からやると言った」と両手を広げればいい。

上等な算段だ。

けれど、若林星奈は気にしなかった。

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