第43章 死角なし

エレベーターの扉が閉まる、その直前。

彼女はゆっくりと振り返り、狙い澄ました刃みたいな視線を、小林岳の脂ぎった顔へ突き刺した。

小林岳も何かを察したのか、反射的に顔を上げる。

だが見えたのは、扉が静かに合わさっていく光景だけだった。

扉を出た途端、甘ったるい声が耳に絡みつく。

「星奈さん、どうして社長室に?」

山川心菜はシャネルの白いワンピース姿だった。

ふっくらとした腹のふくらみを、上質な生地がやわらかくなぞっている。

淡いけれど隙のないメイク。花が咲くような笑みを浮かべ、長年の親友みたいな距離感で寄ってくる。

「昨夜、江庭マンションは大丈夫でした? 直人兄も、どうして星...

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