第60章 指図する?

彼女は若林星奈の姿を見るなり、ぱっと立ち上がった。

「若林さんでいらっしゃいますね。お噂はかねがね。どうぞ、こちらへ」

その応対に、隣の山川心菜の顔色がいっそう曇る。

酒を重ねるごとに、張り詰めていた空気がなだらかに溶け合っていった。

だがその頃、藤原社長の隣にいた渡辺副社長が、不意にグラスを置き、矛先を若林星奈へ向けた。

「若林さん、月鳴プロジェクトの新シーズンのイメージキャラクターに、新人の小林奈々を起用したそうですね」

この渡辺副社長は、山川心菜が藤原グループに送り込んだ人間だ。

若林星奈は箸を置いたが、表情は少しも揺れない。

「ええ。小林奈々さんは月鳴グループのブラン...

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