第72章 結婚して子をもうける

造形に、ほぼ二時間を費やした。

スタイリストが最後のブラシを片づけ、二歩ほど下がって満足げにうなずく。

「完璧です」

若林星奈は椅子から立ち上がり、鏡の前へ行った。

鏡の中の女はバスローブのまま、まだドレスに着替えていない。けれど鎖骨のラインは研ぎ澄まされ、長い髪は低い位置でまとめられ、耳元には細いダイヤのピアスが一対だけ。抜き身の刃みたいに冷たく、それでいて目を逸らせないほど美しい。

星奈は鏡の前でくるりと一度回り、短くうなずいた。

「ありがとう」

スタイリストが目を細めて笑い、何か言いかけた、そのとき。

個室の外がざわついた。

子どもの声だ。

小さく、怯えが混じってい...

ログインして続きを読む